史実とドラマのバランス - 20210719 Team申 第5回公演 『君子無朋~中国史上最も孤独な「暴君」雍正帝~』
これはほんとにただの蔵之介見たさにチケットを取ってしまったやつ。
佐々木蔵之介主宰“Team申”の11年ぶりとなる本公演らしい。
2021年7月19日 18:00
『君子無朋(くんしにともなし)~中国史上最も孤独な『暴君』雍正帝~』
清の第5代皇帝雍正帝(佐々木蔵之介)の人間像を、皇帝への謀反を企てようとした若き地方官オルク(中村蒼)とのやり取りから描いたお話。
45歳とかなり遅い年齢で皇帝の地位につき、1日20時間程働いて、最期は過労死したとも伝えられるほどの規格外なワーカホリック奴だったらしい。
なんせ中国史は疎すぎて、前後もふくめて史実をよく知らぬまま観た。良くも悪くも「易しく」描かれている印象。(私も含め)前知識ない人が多めの題材だと思うが、そんなに説明しなくても…と思う点が多く、史実(或いは歴史的評価)とドラマについての言葉のバランスが、もう少し後者に寄ってて欲しかったと思う。それこそタイトル副題の説明的ノリが劇中も継続していた印象。皇帝とオルクを除く3人が複数役を兼務しながらときにコロスの役割も果たし、時にはオルクも過去を振り返るように語りをするのだが、随所にいらないな、と思う箇所が。
この前の岸田國士戯曲賞の選評(該当作なし)の中で、岡田利規が長田育恵の『ゲルニカ』について書いていたことを思い出した。
ゲルニカ空爆という出来事を知らなかった人がこの作品を通してそれを知ったとしたら、それは価値あることがひとつ起きたと言えるけれども、その価値は現実の出来事をひとつ知ったことに依るものであって、この作品を経験したことに依るものではない。
https://www.hakusuisha.co.jp/smp/news/n40255.html
たぶんこれと似たようなことを思っていて、オルク自体はおそらく架空(モデルはいるのかな)だと思うが、だからこそ、人物像の描き出しを登場人物のやりとりに委ねてあまり説明的にして欲しくなかったなぁと思う。
(なおあとから本書いた人を確認したら、NHKのドキュメンタリーのDと知って、だからか…とは思った。偏見だけど、説明の筋の作り方がNHKっぽい。)
あと最後にオルクが帝を思い出すシーンは要らなかったのでは。要素は残すべきとしてもやり方が違ったような。康熙帝の死で赤い紙吹雪が落ちるあたりから出来たクライマックスの波がとても良かっただけに、残念だった。君子無朋が主題なのだし、オルクが改めて忠誠を誓うシーンは残すにしても、帝の"普通の人間らしさ"を想う余白は、なるべく観客の想像に委ねる描き方がされる方が良かったのでは、と。
題材、北京ダックの件とかとっても面白いので、もっと面白く観たかった。
とはいえ皇帝蔵之介様は最高of最高だったので、元の目的は果たせてしまっている。
作:阿部修英
演出:東憲司
出演
石原由宇
河内大和