theatre-de-hirari

なぐりがき

なぐりがきです。過去の舞台と旅の感想を取りまとめ中。

「天下のレミゼは民衆のおはなし」ということ。あとシュガーさん。ー 20211002&1003 「レ・ミゼラブル」松本公演

2021年10月2日 ソワレ / 10月3日 マチネ

レ・ミゼラブル

 

松本レミゼ、まずは上演までこぎつけてくれたことが何よりありがたいし、個人的事情で行くかどうかも悩んだのだが、頑張って観に行って良かったなぁと思っている。

f:id:theatre-de-hirari:20211027203053j:image

f:id:theatre-de-hirari:20211027203132j:image

何が良かったって、とにかくハコが良かったです。ハコが良かったので、作品そのものへの見方が改まりました。

 

 会場は松本駅から徒歩15分くらいの「まつもと市民芸術館 主ホール」。舞台面が帝国劇場よりはだいぶ狭くて、正方形に近く見えた。帝国劇場のA列が37席に対して、ここのホールが2列目で29席なので、まぁ狭いんだと思う。舞台セットを比較して狭くなっている部分を指摘しているツイートも見かけたし、きっとそうだ。
※本当は図面見たかったけど、貸館している帝劇の図面はネットに落ちてなさそうだった。まつもと市民芸術館は間口16.2m、主舞台奥行23.5m(公式情報)。
アンサンブル含め大勢の演者が一斉にハケるときの花道が明らかに混雑してハケ切るのに時間を要していたので、裏動線も狭いのかもしれない。

 劇場の大きさもさることながら、音響面がとても良くて、(2回とも1階20列(だいたい真ん中)あたりで観ていたのでその限りでの感想だけれども)歌についてはとにかく無駄な響きの味付けがない個人の声色そのものがよく聴こえた。オケは特に中低弦がいつもに増してよく聴こえて、華やかさよりも深みを感じる音だった。こんな劇場環境で観たら、なんだかレミゼの見方を改めなおすことになった。「グランドミュージカルの金字塔」であり、「日本を代表する立派な帝国劇場」で(おそらく)オーディションで公正に選ばれた「トップレベルのキャスト」をもって上演され続けている<<天下のレミゼ>>だが、それゆえに、物語の本質までも過剰に劇的に捉えすぎていたのではないかと。民衆が紛れもなく民衆に見えて、「民衆の歌」がとても<<民衆の>>歌に聞こえた。全員のユニゾンでさえ、ひとりひとりの声を手にとることができそう。それが今回の観劇で何よりも衝撃的だった。作品が得た地位や格式みたいなもの(?)によって、ここしばらくは皮膚感覚が騙されてしまっていたのかもしれない。これは民衆のおはなし。しかも惨めな人々の物語。そんな核を突き付けられた。

 

 もうひとつ外せないのが10/3シュガー(佐藤隆起)さんのバルジャン。役柄へ忠実かつ誠実に表現されている様が見て取れて、感動の極みだったのですよ。若さを感じる序盤から、地位を得た市長としての声、父親としての声、役目を終えた最期の声。3時間の中でたしかに歳をとっていく。ハイトーンの見せ場をとってみても、「独白」が鋭く矢を高く遠くまで放つようだった一方、「Bring Him Home」は大きくベールで包んだ空気を風に託しているように思えた。前者は生命力の強固さ、後者は切実な祈りとして、大変説得力のあるものだった。たしかな歌唱力を地盤にしたその表現力の高さに、圧倒されてしまった。川口さんがレミ出なくなったら通うのやめようと思ってたのですが、、、これは大問題です。

 

以下、まとめられなかったメモたち
10/2
・丹宗さんのR&Bの指差し REDでマリウス Blackでアンジョ側指して絡む。
・砦が落ちる前のアンジョグランの、お互い向き合って肩組んで死ににいくところ。1点の曇りも見せず突き進むアンジョの背中、グランがかなり勢いで正面までついていって「行かせてしまった…」という背中。語る背中ほどつらいものはない。グランが砦の中腹くらいまで一旦行くイメージがなかった(私がこれまで目に入ってなかっただけな気もするけど)から涙腺崩壊した。
・民衆終わりの「フランスに自由を」も涙腺崩壊した。いったいだれ。
・川口さんは最初から割と弱い。ぶれそうってわかる。光夫さん相手だとこうなる・・・?「~あいつがジャンバルジャン」~までの帽子渡すタイミングがどんどん早くなっている?毎度駆け引きしているんだなって思う。いつでも渡すように見せかけて止める。
・のがれたいはやく の前の息切れが苦しい、ただただ苦しい。助けて。
・200%で生きてるなって感じがするのが内藤さんのずるいところ。「いまはむなしい人生」→バルジャン「死ぬならわたしを」の爆発エネルギーの受け渡しがとにかくずるい(褒めてる)。
・井伊ガブ初見。小さいのにませてる感がある。川口ジャベのことぺちっとするのが見れて良かった!(?)
・六角さんは東京で観た時よりずっと楽に歌ってそうだったのが好印象。
・リトコゼちゃんが好きだったし、上手。他の多くのリトコゼちゃんはソロを「暗闇の中に一筋の光を夢見て」って感じの歌い方をするイメージ。終始「弱った子」に見える場合が多い。ところが彼女は割とちゃんと夢見てる芯のある女の子。そこから「暗くて怖いわ」になるので表情声色に落差がでる。短いシーンの中に心の変化が読み取れて、良い描き方だなって思った。そしてその歌い分けが上手い。技術なのか天性なのかわからないけどすごい。

 

10/3
・シュガーバルジャン"光を求め"で一瞬取り出す燭台から物理的に放たれる光と相まって良い。BHH裏声と地声の滑らかな裏声。使い分けているようないないような。地声でも包容力が高い。見下ろすマリウスを包む豊かな声。年代の歌い分け。「告白」マリウスへの"頼むよ"の説得力。「対決」の迫力も増した。若さの幅も広がった?"ちがう、それはちがう"がほかのバルジャンと印象が違う。ジャベと同じ土壌に立っているように見える。これ光夫さんだと「違う世の人」と思うくらい異なる土俵に立っているように見えることがある。
・川口ジャベール"Star星たちは"の時に少しだけ目が輝いて顔の緊張が取れるのが好き。日によるけど今日は割と感じられた。てつ"ごうし"から感じる強い意志。”あいつがジャンバルジャン”は眼圧勝負だった。バルジャンが割と早く帽子持ってた。
・小野田アンジョ"戦うものの"の見据える先。前(正面)→学生見渡して→「明日」で正面見た時の顔。
・ふうかエポのバランス。マリウスに対してとそれ以外の表情の差。前回までは「このかわいさに気付かないマリウス最悪…」とか割と思ってたけど、今期は不器用感増しててさらにエポっぽくなったなって印象。

 

10/2

f:id:theatre-de-hirari:20211027203204j:image

10/3
f:id:theatre-de-hirari:20211027203201j:image

  10/2 10/3
バルジャン 吉原光夫 佐藤隆紀
ジャベール 川口竜也 川口竜也
ファンティー 二宮愛 二宮愛
エポニーヌ 生田絵梨花 唯月ふうか
マリウス 内藤大希 竹内將人
コゼット 熊谷彩春 熊谷彩春
テナルディエ 六角精児 斎藤司
マダムテナルディエ 森公美子 樹里咲穂
アンジョルラス 小野田龍之介 小野田龍之介
ガブローシュ 井伊巧 井伊巧
リトルコゼット 絢田祐生 加賀見陽
リトルエポニーヌ 加賀見陽 絢田祐生
司教 増原英也 増原英也
工場長 石飛幸治 石飛幸治
バマダボア 武藤寛 武藤寛
グランテール 丹宗立峰 丹宗立峰
フイイ 岩橋大 岩橋大
コンブフェール 鈴木たけゆき 鈴木たけゆき
クールフェラック 持木悠 持木悠
ジョリ 新井海人 新井海人
プルベール 藤田宏樹 藤田宏樹
レーグル 藤岡義樹 藤岡義樹
バベ 町田慎之介 町田慎之介
ブリジョン 長尾哲平 長尾哲平
ラクスー 土倉有貴 土倉有貴
モンパルナス 田川景一 田川景一
ファクトリーガール 宇山玲加 宇山玲加
買入屋 般若愛実 般若愛実
かつら屋 三上莉衣菜 三上莉衣菜
マダム さや香 さや香
宿屋の女将(女7) 横山友香 横山友香
カフェオーナーの妻(女9) 五十嵐志保美 五十嵐志保美
病気の娼婦(女5) 石丸椎菜 石丸椎菜
鳩(女8) 大泰司桃子 大泰司桃子
あばずれ(女6) 小林風花 小林風花
若い娼婦(女10) 笠行眞綺 笠行眞綺


f:id:theatre-de-hirari:20211027203235j:image